晴暦3099年、箱庭簒奪の鴎威
晴暦3099年4月。

「ばっちゃん、そっちゃは任せたわー」

太楽海花フロリアは、緋の国の人造竜を破壊し、祖母のハオに「グッ」と握りこぶしを見せた。

「なん・・だと!?」

緋の国の鴎威は動揺を見せた・・・様に見せかけ、

「なんてな。」

フロリアの横っ腹を何かが打ちつけ、海の上を転がりながら港に落ちた。

「あの馬鹿。」

ハオは髪をかきながら、心配どころか侮蔑の言葉を吐き出した。

<ユーン・・・ウーン・・・>

破壊された人造竜は、尾部を振り回しフロリアを弾き、

機械音を鳴らしながら自身を結合・再構築していた。

「いっつも、油断大敵っつってるのに。」

海に落ちた孫を尻目に、鴎威に目をやった。

「当社の特品を侮ってもらっては困ります。」

鴎威は自慢げにつぶやきながらハオの制空圏に入ってきた。

二振りの刀に手をかけるかのような動きをしたと思ったら、

ハオに組み手を仕掛けてきた。

「っ」

ハオはついつい両の手を掴んでしまい、痛みが走った。

鴎威の指がハオの甲にめり込み、パキパキと音が鳴った。

「終末の狐よ、<道の鍵>を譲っていただけませんか?」

「寝言は寝てから言いなさいな。」

ハオは手の甲をつぶされながら、鴎威に煽り返していた。