晴暦3099年、フロリアの風の128
晴暦3099年4月。

フロリアは干し焼きイワシを咥えながらその人造竜相手に体術による格闘を再開した。

「お前の相手は、ここにいるぞ!」

悪魔128の圧縮風術にて光弾の軌道を屈折させ、

竜の6本脚を蹴り崩し、よろめいた所に頭部らしき部分を殴り突き上げた。

このような反撃に対してもまた鴎威の予定外だった。

・・・。

フロリアは干し焼きイワシの尾まで食べ納め、指をペロりと舐めた。

「こんなもんじゃないだろ?んん?」

自分の身長の5倍はある人造竜を踵落としで地に叩きつけた。

さらに踏み蹴り、転がり伏せたところを爪先で持ち上げた。

「起きろよ、なあ、なんともなんだろ?」

・・・。

人造竜は何事も無かった様に、すっくと立ち上がり、胴体中心にある赤い袋を激しく発光させ、

フロリアの眼前で光弾が止め処なく乱れ飛ばした。

乱れ飛んだ光が地に当たり、石のタイルが破裂し激しく砂埃が舞い上がった。

・・・。

港を包み込んだ砂埃の中から、竜の切っ先を掴む手があった。

「それで終わりか?」

「バギギッ!」、竜の切っ先は握り潰された。

一抹の風が吹いた中、フロリアの<異形>がいた。

「きっとルララは腹抱えて笑って怒っているだろうな?」

<フロリア、ねえ、どうする?>

「<いちにっぱ>、やっちゃっていいわ」

異形「風の悪魔128」は、握り潰した所から圧縮した風を竜の体内に送り続けた。

・・・。

竜の胴は歪に膨れ上がり、「パンッ!」と音が響くと共に、脚を残して、四方に弾け飛んだ。

・・・。

「ばっちゃん、そっちゃは任せたわー」

悪魔128はフロリアの脚を引っかき強請った。

<なあ、干し焼きイワシ、くれよ~>