晴暦3099年、霞桜糸の糸斬り鋏
晴暦3099年4月。

「太楽のフロリア」を海花港大通りに弾き飛ばした<それ>は、

海花の丘にある世界樹「サン」の神社「東海原」に向かって光弾を放ち続けていた。

神社側の「太楽のルララ」からも<それ>に向かって狙撃が繰り返されていた。

狙撃に伴う衝撃によって<それ>の不可視迷彩装に支障をきたし、

人造の竜、エンジニアリング・ドラゴンの姿があらわになっていた。

竜と呼ぶには異質、いや、既存の生態系に当てはまらない姿。

人造の竜は東邦の島国「緋の国」で作られている噂は過去にもあった。

それが民間のフェリーに載せられて、この港に現れるとは誰も想像できなかった。

・・・。

緋の国の魔女「音立花の鴎威」は何かの企てにて運んだのであろうが、

それに対抗できる連中がいることは予定外だった。

・・・。

フロリアは干し焼きイワシを咥えながらその人造竜相手に体術による格闘を再開した。

「お前の相手は、ここにいるぞ!」

悪魔128の圧縮風術にて光弾の軌道を屈折させ、

竜の6本脚を蹴り崩し、よろめいた所に頭部らしき部分を殴り突き上げた。

このような反撃に対してもまた鴎威の予定外だった。

・・・。

「驚いた♪これは、驚いた♪ここまで良い様にやられるとはな♪」

そのような状況でありながら緋の国の魔女「音立花の鴎威」は歓喜の笑みを浮かべていた。

「魔王の眷属やワルキューレなど、こうも多く巡り合えるとは♪これもまた運命♪」

「<やつ>もこんな楽しい世界に来ていたのか、なあ、<幻燈サクラ>♪」