晴暦3099年、晴れ時々ハレル
晴暦3099年4月。

それは、干し焼きイワシを咥えながら、市場への買出しから帰るところであった。

それは、海花市場からの大通りの交差点に入るところであった。

交差点からは、港が見え、いつもの海花の海が見えるはずであった。

それは、いつもの港ではなかった。

それは、港の船着場に接岸しているフェリーが燃え、ざわつく野次馬どもが溢れ返っていた。

いや、野次馬どもがざわつき騒ぎ、こっちに逃げてきた。

「なんじゃとて!?」

慌てて、あたしは<でぃふぇんさー>を広げたそのとき、何かが真横をすっ飛んでいった。

振り返って見たそれは、なんとか大通りの地面を削り止った<太楽堂のフロリア>だった。

・・・。

「なにやっとんねん!?フロリャア!?」

「向こう見ろ!向こう!」

「あ、太楽のばっちゃ。」

「そっちじゃない、あっち!あっち!」

「ん?んんんんんんんんん?」

それは、なんかぼんやり見えた。わからん。

「なんじゃあれ?」

それは、砂埃を立てながら、あたしの方に向かってきた。

それは、もう、それはすごい勢いで。

・・・。

フロリアは、あたしが咥えていた干し焼きイワシを咥え、それに向かって突撃を仕掛けた。

「ぁ。あたしの!干し焼きイワシぃいいいいいいいいっ!!」

買出し帰りの大衆食堂「猫福亭」の<猫福の海花ハレル>の悲痛な叫びだけが轟いた。