晴暦3099年、弓取戦舟ぱらぺーにょ

晴暦3099年4月9日。
ここは北リアニン大陸、中東自治国家「ロータス」、大陸間鉄道オアシス「ダイトライン中央駅」。
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電気鉄道が通じているこの時代、地域格差により電力供給されていない区画があるため、
旅客車両には、電力式と燃料式の混合動力を持つ車両は、極当たり前に存在していた。
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プラットホームの無い駅に車両到着のベルが鳴り響いた。
旅客車両と言っても貨物車両も多く線路内には積み下ろしの為のクレーンや貨物トラックが行き来していた。
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十五連盟「フィフティーナ」交渉総務課所属、「光羊蒼華のメリィ」が、所属不明の人工竜「エンジニアリング・ドラゴン」と相対していた。
人造竜とは言うが、爬虫類の様でもない硬質な何か、そう、「ゴーレム」に近い容姿をしていた。
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緊急のサイレンと共に、
<現在、車両外通行道にお降りにならないようご協力の程、お願い致します。>
あまりないアナウンスだ。
車両内では降車を待つ乗客がざわつき、通行道に面するガラス窓に寄っていた。
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人工竜の起動が完了し、その姿が明確になった。
四肢はある。
尾らしきものもある。
ただ、頭部らしき部分が単純な様で意図のわかりにくい形状であり、口吻がない。
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「フェイズシフト・アクター型か」。
メリィは、人工竜という名称を知っていてもそのものを見るのは初めてであった。
両足のふくらはぎに力が篭り、爪先を地に押し付けるようにし、二振りの刀を構えた。
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メリィが突出するその時、手をポンポンと打ちながら、列車より降りてくる者がいた。
「はい。メリィちゃん、なんでも力任せにするのではありません♪」。
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「あなたは賢いんだから、もうちょびっと、やりようを考えましょう♪」。
気の抜ける話し方だが、なんか違和感のある雰囲気が広がった。
その者の両脇には二人ずつ十五連盟の護衛らしき者が立ち、陣形を作った。
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「ぱらぺーにょ殿!ここで、手をこまねいていても進展しません!」。
メリィは振り返らずに「ぱらぺーにょ」と呼ぶ者に進言した。
「はいはい。駄々こねない♪」。
「ぱらぺーにょ」は、ずかずかとメリィの前に布陣した。
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人工竜の内部から何かが回るような音が響き始めた。
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「こういうものは、わたしの得意分野です♪」。
「なにせ、わたしは、武勇伝の持ち主です♪」。
「素手で戦闘艦を倒したという武勇伝を・・・」、
・・・。
「他人のですが♪」。
・・・。
「ぱらぺーにょ」は手をひらひらと仰ぎ始めた。
何もない宙に幾何学的な何かが出現し始めた。
「戦の箱舟の、この、ぱらぺーにょが何とかしましょう♪」。
・・・。
十五連盟「フィフティーナ」に付随するよくわからない存在、「箱舟クラウソラス」の同心「ぱらぺーにょ」が笑みを浮かべ、歩みだした。
晴暦3099年の春。
「憂鬱」との別れの始まりであった。