晴暦3099年、十五連盟のメリィ
晴暦3099年4月9日。

ここは北リアニン大陸、中東自治国家「ロータス」、大陸間鉄道オアシス「ダイトライン中央駅」。

・・・。

電気鉄道が通じているこの時代、地域格差により電力供給されていない区画があるため、

旅客車両には、電力式と燃料式の混合動力を持つ車両は、極当たり前に存在していた。

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プラットホームの無い駅に車両到着のベルが鳴り響いた。

旅客車両と言っても貨物車両も多く線路内には積み下ろしの為のクレーンや貨物トラックが行き来していた。

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<ダイトライン駅。ダイトライン駅。>

<お荷物のお忘れなき用、お降りください。>

よくあるアナウンスだ。

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なぜ、私が「こんな所」まで使い走りにされなければいけなかったのか?

・・・。

一時期、世界各国にて王国主義から民主主義に伴う軍縮化が行なわれたが、

数十年前の「出来事」で、うやむやになった。

政府間首脳はもめ、一時緊急事態になりうることもあった。

そんなこともあって、非武装化へ傾向も中途半端に見直されたかのようであって、

ほんのわずかだが、「護身用名目の武装所持」も制限有りでの容認されていた。

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十五連盟理事院の「一代表の頼み」でここまで来たわけだが、

一時期、席巻していたコングロマリット・カンパニー「大全太楽堂」に向かうことになった。

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ここには初めて来る事ではなかったが、陸続きの国柄であっても、馴染めないものは馴染めない。

一週間の乗車期間で体の節々が痛む。

出迎えはいない。

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いや、眼前に貨物用の大型トラックが止まった。かなり大きい車両だ。

木製の合板で出来たコンテナには、使い古していない新しい印字の業者名が塗られていた。

まあ、こういう時はまともなことが起きないことは察しがついた。

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トラックのエンジンはかかったままだったが、コンテナの中で擦れる音とトラック自体が左右に揺れた。

木製の合板は勢いよく弾け飛んだ。

嫌な予感は的中する。

中から見るからに硬質の物体が畳まれた部位を動かし、歩く素振りを見せた。

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それは人工の竜、「エンジニアリング・ドラゴン」。

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駅舎のスピーカーから広い線路敷地に対し、警報音と共に退避の声が響き渡った。

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やれやれ。

いつも面倒な事に巻き込まれる。

プレートアーマのついた片刃の長剣と近接用短剣を引き抜き、独特の構えを取った。

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十五連盟「フィフティーナ」交渉総務課所属、「光羊蒼華のメリィ」。

晴暦3099年の春。

理事院「海花の太楽のバレリィ」の命を伝える為、脅威を排除する。