晴暦3099年、華斬りの霞桜糸
晴暦3099年4月。

ここは、スーリア国の東端の港町「サン海花町」の港。

・・・

鴎威は、拍手していた。

「面白い!面白いなあ♪変な者も居るもんだなあ♪」

不可視だった「何か」は、フェリーから、可視状態で歪な姿を現した。

「何か」は、「竜」だった。「人造竜」。「エンジニアリング・ドラゴン」。

・・・

「うん。あー、ちょい右♪」

「ちょい右ってどれくらいよ!!」

「右に1メモリかな?」

「何とか見えるようになったけど、可視波長に歪みがあるのよ!!」

「まあ、ぱぱっと予定通り2発撃っちゃって♪」

・・・

パスッ。パスッ。

・・・

飛来するそれは、緋の国の竜に「バリリッ!!」と強烈な発光と、「グチッ!!、・・・スドーーーンッ!!」と轟音を立て2発共命中した。

「なんだ!!」

鴎威は周囲に両目を散らし、索敵した。

「何処から撃たれた!!感知できない距離?・・・あそこか!!」

「霞桜糸(かすみがろうし)、斬れ!」

・・・。

「あ、ばれた♪ もう一撃、行こうぜ♪」

「なんで、そんなに早くばれるのよ!!」

すかさず、再度2発撃って、その場を逃げた!

・・・。

巨大な世界樹「サン」の切り株の元にある神社「東海原」の鳥居を含めた周辺一帯が斬り裂かれた。

猛烈な炎、煙、砂塵・・・、海花町から微かなざわめきが聞こえた。

・・・

「逃げたか。」

「シールド、再構築完了。表皮、再構築完了。戦闘状況の再開が可能。」

「シールド・スプリッタと、オリハルコン弾頭の2セット・・・、ワルキューレでも混じっているのか、この地は。」

・・・。

「海花幽霊!! もうちょっと働きなさいよ!!」

「働いたじゃない♪ まさか、竜とは思わなかったけどねー♪」

・・・。

「さあ、どうする? 太楽の化け物よ♪」

緋の国の魔女「音立花の鴎威」と人造竜「華斬りの霞桜糸」は、燃えさかるフェリーを後ろに立ち構えていた。

・・・

「海花幽霊」と呼ばれた「砂走のレイ」と、地元の太楽の「太楽の海花のルララ」が別場所から改造狙撃銃を構えていた。