晴暦3099年、加速する風のフロリア
晴暦3099年4月。

ここは、スーリア国の東端の港町「サン海花町」の港。

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ハオは鴎威の喉元を体勢を崩しながら踵で蹴飛ばし護岸のコンクリート壁に叩きつけられ、鴎威をコンクリート壁にめり込ませていた。

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「なかなか、うまくいきませんこと♪ひよっこの癖に、すばらしい♪面白い♪」

鴎威は意に介さない表情で言った。

「出てきなさい♪華斬りの霞桜糸♪」

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緋の国から来た接岸中のフェリーの格納層の扉がゆるりと開き、見えない重い「何か」が降りてきた。

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「何か」が降りてきたことはわかったが、突風と共に「白い鳥のようなもの」が「何か」を蹴り上げた。

「何か」はフェリーの格納層の天井に打ち上がり、

フェリーそのものの前部が持ち上がり、後部が勢いよく海にめり込み、海面が沈み、そして、波が跳ね上がった。

更に見えない「何か」を蹴り込み、フェリーの奥に押し込められ、格納層の後部扉が吹き飛び、積載車両が次々と海に転げ落ちた。

フェリー内部で何が起こっているか見えないが、フェリー自体は前後左右上下と振り回されて、護岸壁が水浸しになった。

フェリーの上部休息用甲板の四隅の木箱が弾け飛び、自動稼動のロボットガンが、自滅の如く格納層に乱射を始めた。

が、四隅のロボットガンは、何故か、あっけなく爆散した。

・・・。

「白い鳥のようなもの」が、すり足でランダムに背向けの状態で出てきた。

「ばっちゃん、あいつダメだわ。」

「あらら。で、何かわかった?」

「うん、縮退炉積んでる不可視竜だったわ。」

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「フロリア・・・、あんた、魔と契約してた?」

「128。」

「うーん、おかしいなあ・・・?それくらいなら、余裕でいけると思ったんだけどなあ・・・。」

「ウチもそう思ったわ。」

「ラテとアタシの血、引いていて、オマケで悪魔契約128なのにね・・・。」

フロリア、太楽の海花のフロリア。

太楽の海花のハオの孫の一人。ハオの孫であるルララ、ウララ姉妹の従姉妹。

太楽ラテの血筋の「加速」も引き継いでいる。

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鴎威は、拍手していた。

「面白い!面白いなあ♪変な者も居るもんだなあ♪」

不可視だった「何か」は、フェリーから、可視状態で歪な姿を現した。