晴暦3099年、紅天笑狐のルイボス
晴暦3099年4月2日。

スーリア国の西の国境のある町「サワ野」。

その日、天を貫く「光の矢」が飛び抜けた。

・・・。

それは、古き忌まわしい妖精の「アーマルタ」の放った光であった。

その光は、白き妖精王を消し飛ばしたと思われる。

「思われる」というのは、「妖精王という存在が異常状態」であったから。

・・・。

世界は静かになり、そして、少しずつ、少しずつ、慌てるかの如く、その報を放ち始めた。

・・・。

「やっちゃった、ね。」

大全太楽のタオは、軽く言った。

・・・。

「ルゥーイィーボォースゥー・・・、あんたはぁ・・・、アホの固まりかあああっ!!」

あたしことウララの従姉妹のグリューロット姐さまが怒鳴った。

・・・。

「しゃーないじゃないのー。あいつ、吹き飛ばすのアレしか思いつかなかったんだし。」

「それにあの妖精王、たぶん、元気だよ。ほんと、たぶん。笑っているの、見えたから。」

・・・。

「ルイボスちゃん。そろそろ、この場から姿を隠したほうがいいよ♪」

「もうすぐ、国連の特研が来ると思うし。あの連中、目の敵にしてるし。」

・・・。

「それじゃ!タオ大叔母様、あとのこと、どうぞよろしくお願いいたします!」

「行くぞ!アーマルタ!」

・・・。

従姉妹のルイボス姐さまと妖精アーマルタが、ふわりと宙に浮かんだ。

ルイボス姐さまの臀部には「九尾」が生えていた。

・・・。

「ドンッ!!」っという衝撃音と輪形に歪んだ空気と共に、二人は姿を消した。

・・・。

晴暦3099年の春。

それは、混乱の刻の始まり。

まあ、昔から混乱の刻はあったのだけどね。

面倒くさい夢が始まると、このわたし、ウララは、なんとなく、そう思うのでした。

・・・。

「グリューロットちゃん達も、早く出発しなさいよ♪」

タオ大叔母様の一言により、

きびきびと動く者と、だらだらと動く者が入り乱れる、

そんな、大全太楽堂サワ野支店の朝でもありました。