晴暦3099年、剣狗のスプリング・ワース
晴暦3099年4月。
闇の森の中には、声なのか、叫びなのか、それすら分からぬものが響いていた。
二つの巨大な影が縺れ合い、命を削る音を立てていた。
・・・。
闇の中から、ビシャ・・・と、色の分からぬものが飛び散っていた。
飛び散ったものは、それぞれが煙を発し跳ねていた。
そして、声にもならぬ声が森の中を付き抜け、静けさが訪れた。
・・・。
何かが来た。
大きい。
差し込んだ月の光が、先ほどの音の元を照らした。
原形をとどめていないドラゴンの骸・・・。
・・・。
<己は、「涙の河」を持つものか>
<己は、ここに来た>
<己は、引き寄せられた>
<己は、我に引き寄せられた>
<我の刃に、引き寄せられた>
・・・。
<己は、妖精を狩る者>
<我は、妖精を護る者>
・・・。
晴暦3099年の春の夜。
涼しくもあり、暖かくもあり。
一筋の月の光はその者の姿を照らした。
巨躯の狗、剣を咥える狗。
・・・。
<学べ、>
<己の力の無さを>
・・・。
「星空のキサラ」は、星を映す刀「涙の河」を引き抜いた。