晴暦3099年、迷いの森のハンブレオ
晴暦3099年4月1日。

ここは、スーリアより北東の国「トロア」。

今、夕刻から闇夜への風が吹き込んでいる。

ここは、「トロア」。

ここは、「トロア」にある神聖な森「迷いの森」。

・・・。

迷いの森にある崩れた要塞「ムルルム」に息づく者がいた。

「大丈夫でしょうか・・・?」、少年は尋ねた。

<オマエもわかっている。ここは、「迷い」を司る森。>、その者は答えた。

<妖精たちがオマエを探している。>

<妖精たちには、意思がないように感じられる。>

「どういうことでしょう・・・?」

<わからない。>

<ただ、オマエの命を狙っている事は確かだ。>

「わからない・・・。どうしたらいいのかわからない・・・。」、少年は震えていた。

<ここにしばらく居るべきだ。>

・・・。

少年を護るその者は、暗闇が広がる空を見上げた。

<闇が・・・訪れる。>

<護ってやる・・・地龍王「ジーン」よ。>

・・・。

その者は、獣の姿をしていた。

どのような獣であったかはわからない。

その者は、獣の王「ハンブレオ」と呼ばれ、迷い人に恐れられていた。