晴暦3099年、霧の森の龍話師フォン
晴暦3099年4月3日。
ここはスーリアの何処か。
かすかな妖精の匂い・・・。
あの霧の森からか・・・。
愛と悲痛の声が聞こえる・・・。
・・・。
・・・朝露の香る中、静かなる絶叫が響いた。
・・・。
「双方とも退かれよ!」
・・・。
「ここは、静かな森。」
「ここは、霧の森。」
「ここは、人の来るべきところではない。」
「人は、すぐに帰らなければならない。」
・・・。
「お前は、匂う。」
「血の匂い。」
「人の血の匂い。」
「大勢の人の血の匂い。」
「妖精の血の匂い。」
「大勢の妖精の血の匂い。」
・・・。
「お前は・・・、」
「呪われている。」
「それも、強固な呪い。」
・・・。
「妖精王も退かれよ。」
「この者と戦えば、呪われてしまうぞ。」
<龍話師が、そういうのか?>
龍話師?
<呪いは御免被る。>
<去れ。>
<呪われし、人間よ。>
・・・。
「ここは、霧の森。」
「眼を閉じよ。呼吸を少しの間耐えてくれ。」
・・・風が吹いた。
・・・。
・・・眼を開いた。
・・・息を吸った。
・・・森が見当たらない。
・・・遠くに先ほどの護送車がある。
・・・「龍話師」というのもいない。
・・・さて、どこにいくか・・・。
・・・。
「サクラ、幻燈サクラ。呪われし者が現れた。サクラ、今、何処にいる・・・。」
「龍話師」の「フォン」は、いない相手に語った。
そして、霞の中に消えていった。