晴暦3099年、灰の狐のビター目論む
晴暦3099年4月2日。

ここはスーリア国の東端の港町「サン海花町」。

今、ここにある太楽の支店に本家からの訪問者が来ていた。

・・・。

「そう、昨日の「研修」は非常に参考になった。」

「そう、こちらにもいくらかは被害があった。」

「そう、これはいくら穏健派の老人たちも黙っておられまい。」

「ああ、我々の計画も早まるだろう。」

「ああ、老人たちは「目が開いていない」。」

「ああ、「目を開かせてみるさ」。」

・・・。

で、ビターさんは「どう」されるのです?

「「どう」されるかは、隙無き計画を構築せざるを得ない。」

確かに昨日の「アレ」は、「異常事態」でした。

危うく、ワタシの妹たちも巻き込まれるところでした。

「ああ、そうだ。「異常事態」は確実に広がっている。」

「本家の強硬派も動いている。」

「そう、50年前の「世界非武装条約」は見直さざるを得ない。」

「例外の残骸」は、わずかながら回収できました。

「大婆様も状況が危うい事は察しておられる。」

で、「例外」はどうするんよ?

「「例外」そのものが必要でなく、「状況」自体が必要なんだ。まあ、そのための「証拠」でもあるのだが。」

で、できるの?

「やるさ。」

「そのために、デバッグに「参加」して「経験」を得たのだから。」

さ、どうするん?ワタシらのような、青二才どもが。

「そのためにも、「状況」がまだまだ欲しい。「彼ら」とも接触しなければならないかもしれない。」

「彼ら」・・・か。

ワタシは、この100年近くの安穏とした「平和呆け」がどうなるか不安だった。

だが、灰の狐のビターは策士だ。二手三手、いやそれ以上のことを目論んでいるのだろう。

どうなるか・・・。

そうするか・・・。

今は、ビターを主軸にするしかなかった。

大全太楽堂も一枚岩ではない。常に内部で策謀が入り組んでいる。

太楽の灰狐のビターの情報管理・統制能力は、老人たち以上に長けていたのが怖かった。