晴暦3007年、緋の国の音立花の雷籠
晴暦3007年5月末。
そこは地の底、<天繋ぎの根>。
太古の世界樹の残骸が作った長大な洞窟とされている。
ただ、大陸間規模の広大さがあるため、大規模探掘団体ですら最深部に至ることは無かった。
最深部に何があるともわからない未踏の地でもあるとされていた。
・・・。
高い湿度と油臭さが満ち、水の流れる音が響き渡り、
天井の蛍ゴケの光で人工の洞窟ではありえない明るさを保っていた。
この場所で独自適応進化したと思わしきシダやゼンマイなどが生い茂っている。
大きな動物は見当たらないが、何らかの虫の鳴き声が合唱されている。
・・・。
「ここらへんはどやろ?」
足元の湿った土をひとつまみし、舐めてみた。
「油の味が濃うなってきやったな。」
土の中には<油カビ>が混じっており、それが<燃える水>を作っていた。
昇ってる来る油の匂いが濃い縦穴を選び、無造作に飛び降りた。
「ええ油の匂いや。もう少しやな。」
・・・。
降りた先の洞窟の奥の蛍ゴケの光が強く光って暗くなってくる。
「ほう。先客かい。」
暗順応を効かし、闇の奥の情報を拾った。
「なんえ、あの装備、シーバウスやんけ。」
「あっちも気ぃ付いてやん。」
闇の中から閃光が走った。
「しょーがないにゃー。」
・・・。
リアニン大陸極東の赤道直下の島国「緋の国」の「音立花の雷籠(らいろう)」は、得物の戟で閃光を撃ち払った。
創生魔女衆「九十九」の一人。
その戟、錬金学式装槍「蝦蟇穿ち(がまうがち)」在りし。
「おいおい、こんなとこで銃使うんかよ。」