晴暦3007年、幻想畑のライムギ
晴暦3007年5月31日。
<こちらの世界>に流されて、幾月年か。
<あちらの世界>では、終わりの見えぬ戦の響。
<畑の王>と共に、幾多の民草は彷徨い流れ。
散り別れて、一握りの穂は、道になき道を。
行き着く先には、ほんのわずかな希望の歌を。
・・・。
「雨、土、雲、空、・・・、それに、光・・・。」
「そんな言葉が、あの歌にあったな、と。」
・・・。
「<アーキテクト権限>があっても、わからぬものは、わからんよ。」
「<カーネル権限>があっても、わからぬものは、わからんよ。」
「見えるものが全てだと、」
「聞こえるものが全てだと、」
「<又聞きの又聞きは、真実にあらず>って、誰が言っていたのやら。」
・・・。
「<天劇の王>も、ああなってしまったら、いくら我でも修復できんよ。」
「カーネルが足りぬから、<システム>が作れぬ、作れぬ。」
「どこに行ったものかね、他のカーネルは?」
「まあ、スタンドアロンで、なんとかするか。」
・・・。
遠く、帰れぬ世界から来た<難民者たち>のライムギは、
クオムルの森のバス停で始発を待っていた。
・・・。
「さて、と。」
「西へ行こうか、東へ行くか。」
「願わくは、向かう先が、<エリンの園>であれ、と。」