晴暦3007年、果無我欲のロストベリー
「いつまでも!うざいんだよ!龍人どもがあ!!」

世界のどこに在るのか、無いのか、それすら把握できない「世界の中心」。

「あの時」からずっと際限なく龍人どもは手を休めることは無かった。

手を休めるどころか、次々と戦術が変わって襲い掛かってくる。

それは「最も有効な手に切り替えて、さらに有効な手に変えていく」かのようであった。

世界の中心に在った純白の巨木に絡まっていた「箱舟」の船体は気付いたときにはすでに無かった。

「そろそろ、無制限の手段も事切れてくれないかああ?」

足元に少しずつ組み込んでいた術式で、自らも巻き込む破壊と歪みで何もかも失う術を実行した。

・・・。

「・・・、ここは?・・・、どこだ?」

見知らぬ街中の裏路地に我が身の確認をした。

懐の時計を見たが、気付かぬうちに針が止まっていた。

表の通りに出、街並みを見、掲示板の日付を見て、

「おいおい、あれから4年半経っていたのか?」

「龍人どもめ、休み無く4年半とやってたのかよ・・・。」

ため息が出た。

掲示物を改めて見た。

「ああん?悪魔討伐有志募集?なんだこれ?」

「悪魔討伐一体につき、報酬五万キングス?はあ?」

「なにやってんだ?今?」

「・・・、あ。」

「なんだあれ?」

うにょうにょ動く黒い影が電柱の根元にいた。

「これが、悪魔か?」

待ち行く人々には見えていないようだった。

「おい。」

ひょいと、<それ>を掴んだ。

指先がビリッ!と、した。

・・・。

「おまえ、面白いな♪」

「その<プロトコル>、アタシにくれよ♪」

その悪魔は、相手にしてはいけないものに対し怯え震えていた。

・・・。

その者は、晴暦3002年時に首都オウカナで暴れた魔女「ロストベリー」であった。