晴暦3007年、酒歌水蛇のアリューシャ
晴暦3007年5月23日朝。
朝日が昇り始めた極東のスーリア国。
5年以前から王政より民主化運動されつつあったスーリアだったが、
内政のごたごたが長続き、完全民主化に至らずにあった。
・・・。
スーリアの東の港町サン海花の居酒屋「はるきや」に、
その者が昨日から飲み続けていた。
「ねぇ・・・ジェファ~・・・。あに、寝てんのよ!」
「あんたが国家拘置所から開放されて、あに、ぐだぐだやってんのよ~。」
・・・。
「悪魔殲滅だか、悪魔しばくべしとか、なんかよくわからん条件引き受けて、」
「情報集めとか言い訳しながら、あらしと一緒に酒飲んでるって、あんよ!」
・・・。
ガシャーン!!
「てめえ!悪魔だかなんだか知らねえが、店先で暴れんな、うぉらああ!」
居酒屋前の通りで豆腐屋のおっちゃんの怒号が響いた。
・・・。
「ほら~、悪魔暴れてんのよ~、なんとかしなさいよ~。」
「おい、ジェファ・・・、白目向いて寝てやがる・・・。」
・・・。
あたしがのれんをくぐって、怒号先を見た。
なんだ、ありゃー。
あれが「悪魔」なん?
・・・。
「うっせー!!ひとが水っぽい酒飲んでる最中に、あに、邪魔してんのよ!!」
両手首をくいっくいっと捻ると、身の回りに多くの水の塊が浮き始めた。
水玉がねじれながら、うねる蛇のような形を作った。
それは「水蛇」と呼ばれた何か。
その水蛇をおもむろに悪魔にぶっかけた!
ぶっかけた、というには、その威力はぶっかけるとは違うものであった。
はじき飛ばされた悪魔は通りの交差点の店に突っ込み、水しぶきで汚い虹が出ていた。
・・・。
「うーん、すっきり♪」
満面の笑顔で居酒屋にその者は戻っていった。
・・・。
その者は、川登のアリューシャ。
スーリア国の戦歌姫の「シ」の音称、アリューシャ・スー・シンとも呼ばれている。
・・・。
「ジェファ~、その気絶している振りやめて、さっさと準備はじめなさいな。」
戦歌姫のジェファは、むくりと起き、そそくさと居酒屋を出た。
・・・。
「・・・。あ、ちょと!ジェファ!お会計は・・・!?」