晴暦3007年、凶兎暴兎のジェレイド
晴暦3007年5月22日。

「!?」

ラテは、刹那の気配で、足の踏ん張りだけでは足らず、

左手左指が地面に食い込んでまでも力一杯、今いた場所から咄嗟に避けた!

ずどおおおおんっ!!

何かが突貫して、さっきまでいた草っぱらが砂塵激しく吹き飛んだ!

「あんだあああっ!?」

「なにしやがっ・・・、ああっ!?」

「てめえ!!、2年前の強襲ウサギ野郎かああ!!」

・・・。

「ンハアアアアアアアアアアアアアァァ・・・。」

「なんで、避けるんだぁあ!?」

「斬られなきゃだめだろ?」

「たぁあ!らぁあ!くぅう!!!」

・・・。

「食い足りないんだよぉ・・・。」

頭身の低い「それ」は首をゴリゴリッと鳴らした。

「あああああああああぁ・・・。」

「狐は、素直に、狩られろやぁあっ!!」

離れた位置の「それ」の無動作から、ラテの寸でまで飛びかかれていた。

(っ避けられない!!)

「それ」よりも早く、ラテの眼前に「杭」らしき物が地に刺さった。

「!!」

「!!」

「それ」自体も杭らしき物への回避の如く、宙で態の向きを変えた。

「杭」らしき物は、透明の壁らしきものを纏っていた。

・・・。

頭身の低い「それ」は「人食い兎」の蔑称を持つトロアの国家騎士「ジェレイド」。

数十年に渡り大全太楽と因縁ありし「小さな怪物」と。

・・・。

「ラテさん。見極め不足は、怪我の元ですよ。」

「ジェレイド卿。先見の明無きは、落命の元です。」

杭を抜いた「その者」は、2人に対し諭した。