晴暦3007年、烈風迅雷のフェンネル
晴暦3007年5月15日。

ここは南リアニンの南端の公国「ミールヤン」付近の上空。

公国「ミールヤン」は、南の極地の大陸「フォックニウス」に最も近き国。

・・・。

「ホイホクさん?フォックニウスまでもう少しなん?」

「なおーん。」

箒の先に鎮座するカーバンクルの「ホイホク」は応えた。

・・・。

「んー・・・。アリィーも無茶言いよるわ。」

「ドット・ウィッチ・プロジェクト?」

「あーあれね、あれあれ。あれ?」

「ちと、古い記憶なんでよく憶えてへんし。ってか、忘れたわ。」

「ん?」

・・・。

まだ見えぬ「フォックニウス」の方角に、天上から一筋の光が降りた。

それでも目が眩む光の強さだった。

「なんなん!?」

「なんなの!?」

上空を凝視した。

「んーーーーーー・・・。」

「あ。」

「あれ、・・・サピヲの光矢やん。」

・・・。

「ライブラリ・2・0・9にリンク。」

「アクセラレータ・ハイスピード選択。」

「コード・3、リミット・カット。」

「加速するで!!」

箒の吸気口が、「フオオオオオ!」と鳴り響き、箒の穂先が高振動を起こし、チリチリとした放電が始まった。

「ホイホクさん!振り落とされんように、しがみ付いときや!」

「なおーん♪」

統合自治組織「魔女の家」、魔女「フェンネル」が「フォックニウス」に向け、空飛ぶ箒を加速させた。

・・・。

「ドット・ウィッチもよくわからんが、この世界もよくわからんわーーーーー。」