晴暦3007年、惑いの林檎のファンデメルヴェ
晴暦3007年05月09日。

ここは北の極地の大国「クリスタルズ」の湾。

クリスタルズは外界、諸外国とは隔絶さえている。鎖国である。

・・・。

「ああっ、フラン♪フラン♪愛しきフラン♪」

「数え切れない幾年に、相見えた戦乱の日々♪」

「あなたに感謝の意を表しましょう♪」

「かつて、必要悪の共通の敵として、架空の敵を作り出した最後の守人♪」

「在りもしない敵に翻弄され、世界を分かつその術に♪」

「あなたに歓迎の意を表しましょう♪」

・・・。

ファンデメルヴェは、その手に持つ、この地には不釣合いな「りんご」に口付けをした。

「りんご♪りんご♪魅惑のりんご♪」

「りんご♪りんご♪誘惑のりんご♪」

「りんご♪りんご♪幻惑のりんご♪」

「英雄の帰りし島、最果てにそびえる、かの王樹♪」

「アヴァロン♪アヴァロン♪惑いのアヴァロン♪」

その言葉に答えるかの如く、

暴風暴雪の大地に、巨大な白き蔓がねじれ暴れ、フランの行く手を白き大樹が立ち塞がった。

・・・。

毎年の如く、クリスタルズ首都「マッハマル」へ進軍させる王立国家シーバウスの戦歌姫フラン・シー・ドに、

クリスタルズの自称魔導士のファンデメルヴェが、例年とは異なるパターンの拠点防衛妖精樹「アヴァロン」を発動させた。

・・・。

「ああっ、フラン♪フラン♪奏で手のフラン♪万策尽きさせる我が惑いを魅せて、あ♪・げ♪・る♪」