晴暦3007年、静寂なる魔のシレンシオ
晴暦3007年5月12日朝。

朝日が高く、高く登り、澄んだ空気が広がりつつあった。

草花に付いた朝露が、遠くの人影を滲ませていた。

ここはスーリア国の太楽海花支店の母屋の食堂前。

・・・。

私ゃ・・・太楽の千本刀のミカサ。ミカサは愕然としたでありますよ・・・。

私ゃ、後ろをそっと振り返ったでございますですよ。

「黒い歪な影」が立っていたでありますよ・・・。

「ど、どなたでござんす・・・?」

・・・。

「ねえ、睡魔ちゃん、あの御仁はどなたかの?」、ムカデ姫は問いた。

「静寂なる魔にゃ・・・。」、睡魔ちゃんは答えた。

「静寂なる魔にゃ・・・。」、睡魔ちゃんは答えた。

「静寂なる魔にゃ・・・。」、睡魔ちゃんは答えた。

「そうか、静寂・・・か。」

・・・。

「その人は通していいよ。」、食堂奥から声が聞こえた。

ハオちゃん、奥にいるんだ。

・・・。

「中、入って。」

<ここで結構でございます。>、静寂の魔は答えた。

<ご質問の件に、お答えに来ました。>

<少々、道に迷って、この方の後ろを付いてまいりました。>

・・・!

「なんですとーーーっ!?」、私ゃ、びっくりした。

一体いつから、後ろにいたのか、知らなかったのですよ。

・・・。

<「虚無」の件ですが、「対処法」は特にありません。>

<「有って、無きようなもの」、ですから。>

・・・。

「あちゃ、やっぱり・・・。」

「他に何かヒントない?」

・・・。

<そうですね・・・。>

<「あきらめない」ぐらいでしょうか・・・。>

・・・。

「そっかあ・・・、「あきらめない」か・・・。」

・・・。

<「疑心暗鬼」を回収させていただきます。>

<それでは、失礼致します。>

・・・。

静寂なる魔の「シレンシオ」は、風景に溶け込むように消えていった。

・・・。

「ねえ、ハオちゃん・・・。ごはん・・・、ない?」

・・・。

「んなもん、ない!食事時間終了!開店準備開始!」