晴暦3007年、風の導き手のミロン
晴暦3007年5月14日。

ここは北リアニン大陸最北端の王立国家「シーバウス」の「将軍」岬。

北海を挟んだ対岸の彼方には、北の極地の大国「クリスタルズ」がある。

・・・。

「将軍」岬が若干慌しくなっていた。

先んじて、シーバウスの軍師「フラン・シー・ド」率いる「黒い賢者師団」が「クリスタルズ」に進撃を行ったのだった。

・・・。

遅いな・・・。

・・・ばさっばさっ・・・。

「やあ、シーバウスのユナ第三姫君。」

貴様が来るとは思わなかったが。

「まあ、いいじゃないか。」

で、どうなんだ?

「ああ、もうすぐ来るよ。ここに来るとき、ちょうど真下に見えた。」

そうか。

「太楽の依頼かな?」

そうだ。昔、太楽に借りがある。

「そう、借りを返す事は大事よね。」

「地龍の心の臓」が無ければ、シーバウスは、飢餓の危機にあった。

化石でもよかった。

それを、「金銭取引」という形で譲渡してくれた。

シーバウスの「地」に命が吹き返し、多くの民が助かった。

危うく、あやつ、「フラン卿」の手により「龍狩り」が行われずに済んだ。

「龍狩りはいけないなあ。どんな形であれ。」

ああ。だから感謝している。

・・・。

「グレムリンズ」!!、「オルト」のエンジンをかけろ。

・・・。

「グギギギギギ。」

・・・。

4匹の怪妖精で編成された「グレムリンズ」は、二足歩行戦車「オルト」のエンジンを始動させた。

・・・。

「あの子ら、来たみたいだね。」

ああ。厄介だが、自らを危地に投じる勇敢なる者たちだ。

「じゃあ、怪我しないよう、程度を見極めて帰ってきなさい。」

・・・。

風見鶏の魔女のハーピィ「ミロン」は、ふわりと飛び上がり、冷たい風吹く丘の上に舞い降りた。

・・・。

「勝利の風よりも、幸せの風が吹きますように。」