八目さん、バベル戦域に突入す
晴暦3007年5月10日。

ここは「西リアニン大陸」の民主主義国「イルタリア」。

・・・。

ここまで来た。

5年前の騒動で、散り散りになった太楽の安否確認を行ってきた。

太楽防衛部のアルル師範の捜索は別動隊によって確保されたらしい。

「確保」というのも気になるが、今ここにいる「この場の異常さ」は、なんだ?

・・・。

・・・前方に巨大な建造物が見える。

それも天を貫かんとばかりの大きさだ。

この国「イルタリア」には、こんな建造物はなかったはず。

では、一体何か?

・・・。

それにしても、静かだ。

静か過ぎる。

生活の匂いはあるが、気配がない。

なんだ?

・・・。

嫌な感覚だ。

私は格闘杖を展開した。

私は八目。大全太楽堂本舗総務部兼防衛部所属。

私は「絶対防御壁」という能力を持っている。何事にも干渉されない特殊な能力であった。

・・・。

この直後に知った。

この静けさは、住民同士の仲違いの後であったことを。

その原因が、あの塔「バベル」によるものだと。